【人生の知恵・仕事の知恵】Delegating management

Delegating management

★経営のコツ
先日、仕事を一人で抱え込む年配のリーダーの方に、部下からの苦情が出ている旨を伝え、改善を促したところ下記のように反論されました。
「わかっています。でも任せる人間もいないし、私がいないとダメなんですよ」
その後、1時間話し込んだ上、以下のように諭しました。
「よいマネジメントはですね、〇〇さんがいないと回らない組織ではなく、〇〇さんがいなくても回る組織を作ることですよ」

★一生懸命の罪
生前、松下幸之助は、下記のように話していました。
「一生懸命やっている経営者が、やればやるほど、経営がおかしくなっていく。本人は一生懸命やけども、やり方が間違っている。自転車操業の社長ほど、一生懸命や」
本人は、別に一生懸命を否定しているわけではなく、周りが見えていない経営に対する注意を呼びかけたわけです。

★違う空気を吸ってもらう
いなくても回る組織は、どんなことからでも、任せることから始まります。
たとえば、いつも自分が参加している会議に部下にも参加してもらい、別の視点でものを見てもらうなどをして、本人の意識を変える機会を作るなどです。そして、部下の気づきを喜びと捉えることが、次世代リーダーを生むきっかけになるのです。

湯浅 忠雄(ゆあさ ただお)
アジアで10年以上に亘って、日系企業で働く現地社員向けのトレーニングを行う。「報連相」「マネジメント」(特に部下の指導方法)、5S、営業というテーマを得意として、各企業の現地社員育成に貢献。シンガポールPHP研究所の支配人を10年つとめた後、人財育成カンパニー、HOWZ INTERNATIONALを立ち上げる。
【この記事の問い合わせは】yuasatadao★gmail.com(★を@に変更ください)

【従業員の勤労意欲を高めるために 】第870回:ライフスタイルとモチベーション(10)良いライフスタイルが良い健康、良い経営の基本

870回:ライフスタイルとモチベーション(10)良いライフスタイルが良い健康、良い経営の基本 

前回(注:Web上には未掲載、メールマガジンにのみ掲載)は、趣味を持つことで、気分がリフレッシュされ、また頭の働きが良くなるというお話でした。今回は、運動や食事とメンタルヘルスの関係についてです。

スペインの小学生567人を対象にした調査では、週に3時間以上の身体活動を行う参加者は、この基準を満たさない参加者よりも心の知性(自分や相手の気持ちを理解したり評価・制御したりする能力)のスコアが高いことが示されました(Melguizo-Ibanez et al., 2022)。また、システマティックレビューは、大学生の健康的な食事が、うつ病、不安、ストレスなどのメンタルヘルスの問題を軽減することを示しました(Solomou et al., 2023)。このように、健康的なライフスタイルは、心を良い状態に保つうえで大事といえます。

しばしば、駐在員の現地への適応が主要なテーマになります。しかし、現地のライフスタイルに適応していることと、健康的なライフスタイルを実践していることとでは、意味が全く異なります。例えば、先行研究では、糖尿病は、日本人や米国人よりも日系アメリカ人ではるかに多いことが示されています(Fujimoto, 2016)。このことは、現地のライフスタイルに適応することで、かえって健康を害する可能性があることを意味します。

駐在員のパフォーマンスを最大化させるには、ライフスタイルに着目する必要があります。良いライフスタイルを維持することで、良い経営の実践に活かしていきましょう。


Fujimoto, W. Y. (2016). 2015 Yutaka Seino distinguished leadership award lecture: the Japanese American community diabetes study and the ‘canary in the coal mine’. Journal of Diabetes Investigation, 7(5), 664-673. https://doi.org/10.1111/jdi.12539
Melguizo-Ibanez, E., Gonzalez-Valero, G., Badicu, G., Filipa-Silva, A., Clemente, F. M., Sarmento, H., … & Ubago-Jimenez, J. L. (2022). Mediterranean diet adherence, body mass index and emotional intelligence in primary education students?an explanatory model as a function of weekly physical activity. Children, 9(6), 872. https://doi.org/10.3390/children9060872
Solomou, S., Logue, J., Reilly, S., & Perez-Algorta, G. (2023). A systematic review of the association of diet quality with the mental health of university students: implications in health education practice. Health Education Research, 38(1), 28-68. https://doi.org/10.1093/her/cyac035

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、東北大学客員准教授、国際経済労働研究所理事、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
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【総点検・マレーシア経済】第492回 中銀のコロナ禍への対応、マレーシアとタイの比較(2)

492回 中銀のコロナ禍への対応、マレーシアとタイの比較(2

前回に引き続き、バンク・ネガラとタイ中央銀行のコロナ禍への対応を比較していきます。図はタイの政策金利(青線)と消費者物価上昇率(CPI、橙線)、政策金利からCPIを差し引いた「実質金利」(灰棒)の3つについて、2020年1月から2024年1月までの状況を示したものです。

2020年、タイ中銀はコロナ禍がはじまるとともに政策金利を1.25%から0.5%まですみやかに引き下げます。2022年にはいるとCPIは4%を超える水準に上昇し、2022年8月のピーク時には7.66%に達しました。これに対して、タイ中銀が利上げを開始したのは2022年8月で、まさに物価がピークをつけた時点でした。
その後、タイ中銀は2023年9月まで1年1カ月にわたって2%ポイントの利上げを続けます。この時点でCPIは0.3%にまで低下しており、その後、タイのCPIはマイナスの領域に落ち込んでいきます。タイ中銀の利上げは開始が遅く、終了も遅かったように見えます。

結果として、現在は政策金利が2.5%と比較的低いにもかかわらず、CPIがマイナスなため、実質金利は3%台後半にまで上昇しています。これは、CPIが2%の状況を仮定すると5%台の政策金利に相当し、タイ政府が利下げを求めて苦言を呈するのも理解できます。実際、タイの2024年の経済成長率は2.8%と見込まれており、経済成長率は低い状況になっています。

このようにみると、タイの中銀のコロナ禍への対応は、当初は迅速だったものの、物価上昇への対応は遅く、利上げの停止も遅れ、現在は利下げへの要求が高まっており、景気や物価の推移からやや遅れたものになっているように見えます。

熊谷 聡(くまがい さとる)
Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。
【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

【マレーシア・トレンド・ウォッチ】“新村”の世界遺産登録を巡る議論

“新村”の世界遺産登録を巡る議論

「新村(ニュービレッジ)」のユネスコ世界遺産登録を巡り、議論が起こっています。マレーシアの「新村」は、マレーシア史、特に華人社会の歴史を理解する上で重要な存在です。ただ、その割には、日本語のメディア報道に載ることは稀なため、あまり知られていないように感じています。この動きについては、3月18日付けのシンガポール紙The Straits Times(ST)電子版でクアラルンプール特派員のAzril Annuar記者が”Why an idea to nominate Chinese new villages as a Unesco site got Malaysians riled up”という良記事を配信しています。

そもそも、「新村」とは、1949年から1950年代のマラヤの地方部に強制移住で作られた華人系住民の村落のことです。1948年のマラヤ共産党の蜂起に対して、英国が非常事態宣言を発して鎮圧にあったことが背景にあります。華人系住民が共産党の支援にまわらないようにすることが目的でした。ST記事によれば631カ所の「新村」が形成され、数十万人が強制的に移住させられたことが判明しており、現在も少なくない数の新村が残っており低所得に悩まされている状況です。

ST記事によれば、世界遺産登録に賛成する地元村長は、マレーシアの歴史の一部であり、「新村」が歩んできた厳しい歴史を保存することになり、観光地となれば保全のための資金源ともなると述べています。ただ、マレー系政治家からは「新村」が世界遺産に認定されると、「先住民」の一つとして認められる余地が生まれてしまい、マレー人の権利への挑戦となり得るとして、むしろ、マレー系中心の「カンポンバル」の方が世界遺産に適切だという主張もでています。

今後、どのような形で落ち着いていくのか、まだ予断ができません。いずれにせよ、「新村」の存在はマレーシア史において忘却されてはならないものであり、これを機にその歴史と課題が広く知られることを望みたいところです。

※本連載の内容は著者の所属組織の見解を代表するものではなく、個人的な見解に基づくものです。

川端 隆史(かわばた たかし)
マレーシア研究者。1976年栃木県生まれ。東京外国語大学マレーシア専攻卒業。1999 年から2010年まで外務省に勤務し、在マレーシア日本国大使館、 国際情報統括官組織などを歴任。2010年11月から15年7月までは SMBC日興証券でASEAN担当シニアエコノミスト。2015年8月に ソーシャルメディアNewsPicksと経済・産業情報プラットフォームSPEEDAを手がけるユーザベースに転身、2016年3月から同社シンガポール拠点に駐在。2020年12月から2023年3月まで米国リスクコンサルティングファームのクロールのシンガポール支社に勤務。共著書に「マハティール政権下のマレーシア」、「東南アジアのイスラーム」、「東南アジア文化辞典」がある。この記事のお問い合わせ は、takashi.kawabata★gmail.comまで(★を@に変更ください)

【イスラム金融の基礎知識】第539回:カザフスタンのイスラム銀行

539回:カザフスタンのイスラム銀行 

Q:カザフスタンのイスラム銀行の現状は?

A:カザフスタンは、人口約1,900万人、ムスリム人口比率7割にして、マレーシアと同じく産油国であり、人口一人当たりのGDPもほぼ同水準にある中央アジアの国である。同国のアル・ヒラル・イスラム銀行のゴードン・ハスキンスCEOは、地元メディアに対してこの国の経済とイスラム銀行市場について語っている。

カザフスタンにはおよそ20の銀行があるが、このうちイスラム銀行は2行のみである。一つは国内資本のザマン銀行で、1991年に創業した。もう一つが今回取り上げるアブダビ資本のアル・ヒラル・イスラム銀行で、2010年の創業である。イギリスの金融雑誌「ザ・バンカー」によれば、後者はイスラム金融資産ランキングで196位に挙げられている。

ハスキンスCEOによれば、カザフスタンのイスラム銀行市場は多数派を占めるムスリム国民による信仰の発露として利用されている側面がある一方で、従来型銀行と比較して経営が健全で透明性があるからという理由で選ぶ利用者も多いとしている。こうした利用者意識が高いものの、国による制度がまだ十分整えられていない点も指摘している。すなわち法律・会計・税制などで、イスラム銀行のための制度設計がなされていないため、ビジネスの困難さに直面しているとした。

同銀行は外国資本であるため、カザフスタン国外の投資家との接点も多いが、同国の経済をみた場合、従来の石油や天然ガスだけでなく、ここ数年は鉱物・農業・物流なども発展分野であるとみなしている。地政学的にも中央アジアで重要な位置にあるカザフスタン経済は、近年安定しており、インフレの低下とともに金利を下げる政策を中央銀行は採用した。こうしたことを背景として、今後3年から5年は同銀行の成長が見込めるだろうとの見通しを、ハスキンスCEOは語った。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。

非常事態宣言、コロナのため?政権維持のため?

ムヒディン・ヤシン首相が1月12日、新型コロナウィルス「Covid-19」感染拡大を受けてアブドラ国王の同意を得て国家非常事態宣言を発出した。13日から発令された再ロックダウン「行動制限令(MCO)2.0」に合わせて発出したもので、ムヒディン首相は政府の権限を強化することでMCO発令をスムーズに行うためと説明しているが、野党や人権団体だけでなく与党内からも「やり過ぎ」、「不要」との声が上がっている。

非常事態宣言下でも外出制限はなく、経済活動や司法は通常通り行われることが保証される。基本的には政令である行動制限令(MCO)や条件付き行動制限令(CMCO)、回復期の行動制限令(RMCO)の範疇で行動の範囲が定められる。一方、立法府は活動が停止され、立法・法改正・撤廃は認められない。「安全」であると確認されない限り、国・地方レベルの補欠選挙や総選挙、州議会選挙は行われない。感染者治療のために行う私立病院の施設の接収、違反者に対する罰則、マレーシア国軍への権限付与など緊急に法律が必要になった場合には国王が制定することになっている。

新型コロナ対策のための行動制限については国民からも支持する声が多く、非常事態宣言についても表立っての国民からの反発の声は少ない。しかし野党や人権団体は、議会によるチェックを受けずに政策が実行できることの危険性を指摘。昨年3月のMCO1.0でも現行法だけで問題はなかったのに、今回わざわざ非常事態宣言を出す必要があるのか疑問を呈している。

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与党連合・国民同盟(PN)と共闘する統一マレー国民組織(UMNO)のナジブ・ラザク前総裁(元首相)ですら、非常事態宣言を行った他国の中にも議会を停止した国はないと強調。「もし政府が言う通り議会停止が経済回復につながるというのであれば、他の国はその機会を逃している」と皮肉った。

コロナ対策をスムーズに進めるということのほかに、別の動機があったのではないかという見方も多い。UMNO長老であるナズリ・アジズ元総裁補は、「自分がムヒディン政権不支持を公表したため下院で過半数を維持できなくなったため」と述べている。元々ムヒディン政権は国会で過半数を確保できているのか疑問がもたれてきた。つまり不安定な政権の維持を目的に国会を停止させるためという訳だ。

UMNO内にはこれまで自分たちがムヒディン内閣を支えてきたとの意識が強く、自分たちの言うなりにならないムヒディン首相に対する不満の声が根強い。このため事あるごとに政権離脱をちらつかせて政権に揺さぶりをかけてきた

UMNOが政権を離脱したら直ちに内閣は解散に追い込まれる。ムヒディン首相が率いる統一プリブミ党(PPBM)は弱小で、UMNOなど他党派の支援なしに政権を維持できないからだ。そして総選挙が行われた場合、地方の地盤が脆弱なPPBMが第一党になれる可能性は限りなく低い。 こうした状況を知っているムヒディン首相としては、UMNOの動きを封じて政権を維持するために非常事態宣言を出さざるを得なかったという訳だ。

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脆弱な相対貧困層、コロナ禍でさらなる危機に

カザナナショナル傘下のカザナ研究所は、マレーシアの相対貧困は120万世帯、つまり全世帯の17%にも及び、新型コロナ対策の活動制限でさらなる苦境に陥る可能性があるとみていると、1月18日付けマレーシアンリザーブ電子版が報じました。

マレーシアの世帯収入の中央値は5,873リンギとなっており、相対貧困はその半分と定義されています。さらに同研究所は、新型コロナ対策での経済活動の制限強化は、相対貧困から絶対貧困である2,208リンギ以下に陥ってしまうリスクが高まっていると警告をしています。

この所得層は現業やインフォーマルセクターに従事する人々が少なくありませんから、活動制限は収入減に直結します。雇用する側も長引くコロナ禍で苦境にたたされれば、賃金の未払いといった事態も想像できます。

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6世帯に1世帯が相対貧困であり、1日あたり10リンギ程度の出費という計算になります。食事だけでも楽ではありませんが、さらに家賃や光熱費などの固定費を差し引けば、一世帯で使えるお金は極僅かとなります。そして、一人当たりではなく、世帯ですから、2人、3人という人数での金額となります。食費を相当切り詰めても1日三食は満足に食べられない可能性が高い状態です。1人世帯でもぎりぎりの水準でしょう。

近年、マレーシアのみならず、新興国では経済格差が広がりが大きな問題となっています。しかも、親の所得層がそのまま子供にも引き継がれやすい状況です。同様の傾向は先進国でもみられますが、公的福祉を利用することもできます。新興国では制度が未整備だったり、不十分であったりすることがほとんどですから、事態はより深刻です。

コロナ禍は、こうした脆弱な経済状況にある人を一層苦しい状況にしかねないとは言われて来ましたが、データでみるとその深刻さがはっきりと浮き彫りにされています。

※本連載の内容は著者の所属組織の見解を代表するものではなく、個人的な見解に基づくものです。

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2020年マレーシアの出来事(下半期編)

2020年は、マハティール・モハマド政権の崩壊にはじまる政治的混乱と新型コロナウイルス「Covid-19」感染拡大が2大ビッグニュースだった。3月に導入した行動制限令(MCO)で一度は抑え込んだにみえた新型コロナだが、9月のサバ州議会選をきっかけに再拡大。ついには再び移動規制を強化することになり、経済への影響が深刻化している。ムヒディン・ヤシン新政権は議席数が少ない少数与党ということもあって不安定な政権運営を強いられ、他の与党構成党からの突き上げに右往左往する状況が続いた。激動の一年間を振り返る2回シリーズの今回は下半期の巻。
上半期の記事はこちら 2020年マレーシアの出来事(上半期編)

早目に手を打った行動制限令(MCO)によって新型コロナ感染拡大の抑制に成功、経済への影響も見え始めてきたことから、徐々に正常化に向かうべきとの世論が強まったことで、6月10日から復興のための行動制限令(RMCO)移行したのに続き、7月1日から新たに水上テーマパークや映画館、スパなどの営業再開が認められた。タイやシンガポールとの国境規制についても解除の方向で動き出した。7月1日の新規感染者はわずか帰国者による1人だけとなり、政府も国民も出口戦略の方に関心が集まっていった。

ショッピングモールの客足も50ー70%回復。人の動きが再開されると共に、ホテル業界も徐々に予約が回復した。一方で、建設業界は23%ではまだ工事を再開できないという厳しい状況が続いた、中央銀行バンク・ネガラは景気回復を下支えすべく更なる利下げに踏み切った。

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しかし景気回復のスピードは鈍く、政府は9月いっぱいで終了する予定だった銀行ローンの返済猶予措置を失業者など特定のグループを対象に3カ月延長すると発表。さらに人手不足に悩む建設&農園&農業の3つのセクターにおける外国人雇用解禁を発表した。

同州野党・国民戦線(BN)の工作によってくら替え議員が相次いでいたサバ州では、追いつめられたシャフィー・アプダル首相が議会解散・州議会選挙に打って出た。ムヒディン首相率いる国民同盟(PN)とBNの連合軍が勝利したものの、選挙をきっかけに新型コロナ感染が再び拡大。外国人労働者宿舎のクラスターから広がり、本格的な感染第三波が始まった。


 

10月には首都圏などにに条件付き行動制限令(CMCO)を発令し、ついには全国規模でのCMCOへの逆戻りとなった。12月下旬になってもコロナの勢いは衰えず、1日当たり1千人の感染者がでている。

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コロナ拡大の不安が強まる中、野党だけでなく与党内部からもムヒディン首相に対する不満が増大した。このままでは国会運営が難しいと判断したムヒディン首相が法案成立せずに予算執行などが行なえる緊急事態宣言の発令を国王に提案するも、結局は「政治的対立を棚上げして面前のコロナ対策に協力して当たるべき」との国王の呼びかけもあって無事に予算案をはじめとする重要法案を可決して閉幕した。ただ解散・総選挙圧力には逆らえず、ムヒディン首相はコロナが終息したら速やかに総選挙を行なうと言明した。


 年が押し詰まった12月31日には、クアラルンプール(KL)ーシンガポール間の高速鉄道(HSR)事業についてマレーシア・シンガポール両国が計画を中止することで合意したことが明らかにされた。
(了)
(マレーシアBIZナビ編集部)

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2020年マレーシアの出来事(上半期編)

2020年は、マハティール・モハマド政権の崩壊にはじまる政治的混乱と新型コロナウイルス「Covid-19」感染拡大が2大ビッグニュースだった。2018年の総選挙で勝ったばかりの希望同盟(PH)政権は内部分裂を起こしてあっけなく崩壊、分裂騒ぎの中心となったムヒディン・ヤシン氏が政権を樹立したが、経緯が不透明ということもあって不安定な政権運営を強いられている。新型コロナ対策では、3月に早くもロックダウンに近い行動制限令(MCO)を発令していったんは抑え込んだかに見えたが、その後の規制緩和につれて感染が再拡大。いまだ先行きのメドがたたない状況だ。激動の一年間を振り返る2回シリーズの今回は上半期の巻。
下半期の記事はこちら 2020年マレーシアの出来事(下半期編)

2020年は飲食店での禁煙違反への罰則開始やデジタルサービス税導入、チャイルドシート義務化などで始まった。中央銀行バンク・ネガラは景気に陰りが出ていることから低インフレ率を背景に先手を打って景気底上げを狙って利下げに踏み切った。
 新型コロナは26日に早くも訪マ中国人観光客から感染が確認され、湖北省周辺在住の中国人の入国が禁止された。中国人観光客を制限する動きが加速し、各企業も出張取りやめなどの対策に乗り出した。

2月には湖北省に取り残されているマレーシア人の帰国のためのチャーター便も運行されたが、まだこの頃は対岸の火事をといった感覚が強かった。しかし4日に初のマレーシア人感染者が確認され、続いて人から人への感染も確認されたことから空気が一変、国内での感染拡大への懸念が高まり、イベントの延期・中止などの動きが加速化した。
PH政権内では、アンワル・イブラヒム氏支持派と反アンワル派の対立が激しさを増し、反アンワル派が宿敵の国民戦線(BN)との提携を模索。これに批判的なマハティール首相が抗議のために辞任した。反アンワル氏は頑迷なマハティール氏を担ぐのを断念。ムヒディン氏を担ぐ事を決めた。

こうして誕生したムヒディン政権だが、新型コロナ感染拡大中ということもあって国会承認なしにアブドラ国王の一声によって決定したことから、その正統性を巡って後々まで混乱が尾を引く事になる。

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中国経由に限定的だったコロナ感染者は、2月末からセランゴール州のモスクで開催された大集会をきっかけに全国に拡大。17日には初の死者も確認された。ムヒディン政権は18日付けで全国的な移動制限措置となるMCOを実施すると発表した。
 ムヒディン政権は、2月27日にマハティール政権が発表した経済対策に続き、2,600億リンギ規模の追加景気対策を発表。賃金助成金制度や一時金支給などが盛り込まれた。

新型コロナの脅威はおさまらず、MCOは延長され、4月はまるまる規制が行なわれることになった。ただ経済活動はセクターを絞ったり営業時間などの制限を設けた上で段階的に規制が緩和されることになった。

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5月4日付けで条件付き行動制限令(CMCO)に切り替えられ、ほとんどの経済活動の再開が標準的運用手順(SOP)遵守を条件で認められ、電子電気などがフル操業となった。

 

MCO、CMCOが奏功して新型コロナ感染拡大がひと段落してきたところで、経済回復を進めるために6月10日から復興のための行動制限令(RMCO)に移行され、国内旅行を許可するなど社会活動の一層の規制緩和が図られた。

(次号、下半期編に続く)

(マレーシアBIZナビ編集部)

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マレーシア史における2020年は歴史的な転換点

2020年のマレーシアは本当にいろいろなことがあった年でした。おそらく、あとから歴史を振り返るとき、2020年は特別な意味を持つ、歴史的な転換点だったと言われることになるでしょう。いくつか重要なイベントはありましたが、ここでは2つだけに絞って振り返りたいと思います。
まずは、やはり、新型コロナウィルスの蔓延が挙げられるでしょう。マレーシアも経済的なダメージや死者の発生は避けられませんでしたし、まだ予断が許されない状況が続いていますが、大きな視点から見れば一方的な拡大は食い止めることができたと評価してもよいと思われます。米国や欧州、近隣でもインドネシアやフィリピンの状況と比較すると、制限がかけられながらも一定の経済活動が認められている状況です。経済が大きくスローダウンしながらも、危機的な状況にまでは陥っていない、どうにか持ちこたえられる環境だと言えます。
もう一つ大きいのはマハティール政権が瓦解し、ムヒディン政権が成立したことでしょう。そもそも、マレーシアは長らく、政権交代がそう簡単には起こらない国とみなされていました。しかし、2018年は選挙を通じて、ナジブ政権が退陣し、90歳を超えるマハティールが再登板という展開となり、世界からの注目も集めました。そこから2年ほどで、もう一度政権交代が起こった格好です。しかも、選挙なき政権交代という、マレーシア政治史上で初めての出来事となりました。
そろそろ2021年を迎えますが、新型コロナウィルスは収束していませんし、政局も与野党の攻防が続いています。視界不良のなかで2021年が幕開けする中、様々なシナリオとオプションを想定して臨むことが重要になりそうです。

※本記事の内容は著者の所属組織の見解を代表するものではなく、個人的な見解に基づくものです。